北海道江別市で発行されている川柳誌「水脈」67号(編集発行人・浪越靖政)が届いたのでご紹介する。巻頭に浪越の「真島久美子句集『恋文』を読む」が掲載されている。その時々の話題が毎号紹介されていて、66号では「暮田真名著『宇宙人のためのせんりゅう入門』を読む」、65号は「哀悼 石田柊馬」であった。以下、67号の同人作品から。
波風が立たなくなった沼の葦 酒井麗水
仇敵の尾をふる音がきこえます 落合魯忠
足元を掬うとしらたきになるよ 河野潤々
太陽も彼此彼是も何かおかしい きりん
新じゃがのツルンとしてて未来形 平井詔子
スズランいっぽんアルカイックスマイル 一戸涼子
遠投がホームシックによく効いた 宇佐美愼一
さくら風味の水になんだか満たされる 澤野優美子
残像が右耳たぶを離れない 浪越靖政
今までに書いたこともあるが、「水脈」は飯尾麻佐子の「魚」「あんぐる」の後継誌である。「水脈」56号に浪越が「飯尾麻佐子と柳詩『魚』」を書いているのによると、次のようになる。
「魚」 1978年11月創刊。1996年8月、63号で休刊。
「あんぐる」1996年7月創刊。2002年7月、第17号で終刊。
「水脈」 2002年8月創刊。
「水脈」50号に浪越は次のように書いている。
「本誌の前身は1996年7月創刊の『あんぐる』で、飯尾麻佐子を中心に活動してきたが、麻佐子の体調不良があり、02年7月に第17号で終刊した。しかし、その後の話し合いで同人の再出発への意思が強く、新たに『水脈』を発行することになった」」
「あんぐる」はさらにさかのぼると飯尾麻佐子編集・発行の「魚」にゆきつく。魚については「川柳スパイラル」12号で私も次のように書いたことがある(「女性川柳とはもう言わない」)。
〈明治・大正・昭和前期まで「女性川柳」は男性視点で論じられてきたし、その際に男性川柳人が求めるものは「女の川柳」「恋愛」「抒情」「情念」などであった。人間の知情意のうち主として「情」に関わる部分であり、理知的な部分は副次的となる。当然そこから抜け落ちるものがあり、女性が自らの視点で女性川柳を考えるための場が要請されるのは必然だろう。こうして登場した川柳誌が飯尾マサ子(麻佐子)の「魚」である〉
川柳誌にはそれぞれのルーツがあり、「水脈」は現代川柳の一翼を担ってきた柳誌である。けれども雑誌は永遠に続くものではなく、どこかで終刊の時期を迎えるのはやむをえない。今号に「『水脈』の終刊について(予告)」の掲示が出て、来年8月の第70号をもって終刊するという。それまで全力で発行を続けるということなので、あと一年間の活躍を見まもりたい。
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