2024年9月14日土曜日

第12回文学フリマ大阪

9月8日(日)に文学フリマ大阪が天満橋のOMMビルで開催され、主催者発表で4899名(出店者・1141名、一般来場者3758名)の参加があったという。盛会だったけれど、背中合わせのブースのスペースが狭く、移動しにくいという難点があってやや疲れた。
大阪ではじめて文学フリマが開催されたのは、2013年4月のこと。このときの会場は堺市の産業振興センターで、来場者は1600人ほど。そのときのパンフレットには「ついに大阪でも文学フリマを開催することができました」「関西圏では初めての文学フリマです」「今回の大阪開催はゴールではなく、はじまりです」などの言葉が見られる。10年を経て文フリ大阪も発展してきたわけだ。 私が文フリ大阪に出店しはじめたのは2015年9月から。2018年から会場が堺市から天満橋OMMビルに変わって、現在に至っている。ずっとひとりで川柳からの出店を続けていたが、最近は川柳のブースも出るようになり、今回は「川柳EXPO」と隣接配置。
ゲットした冊子をいくつか紹介すると、まず「川柳光子猿」。見開きの右ページに参加者の作品、左ページに海馬の評が付いている。

富士山が昨夜発見されました      まつりぺきん
(訳者注 天国なんてあるのかな)   まつりぺきん
どくだみのしのびわらいをたやさずに  八上桐子
かたつむり まぶたのうすくなるばかり 八上桐子
鉄道を畏れ糖度を下げたいの      榊陽子
押しのけて押しのけていく胃袋へ    榊陽子

榊陽子は「やかましい夢は空調にすぎない」という6ページの冊子も出している。
林やは編集・発行の「90’s」は川柳・短歌・エッセイ・詩の各作品を掲載。川柳のページから。

頼まれて問いの雌雄を選り分ける  ササキリユウイチ
牛乳の数学力じゃ帰れない     ササキリユウイチ
淋しいと言って崩れた所得税    郡司和斗
登りつめると匿名性が待っていた  郡司和斗
焼きたての名探偵はふたつまで   雨月茄子春
かつて名探偵だった雪が降る    雨月茄子春

短歌では「西瓜」13号を購入。

境界をこえゆくものは自らの帽子をつかみ引き下ろすべし 江戸雪
爪を切る静けさのあと白鍵と黒鍵は交互に鳴らされた   鈴木晴香
こめつぶのごとき恋愛感情がわつとむらがるわが耳に背に 染野太朗
目的を持つことで境界線が引ける だからどうだというんだろうか とみいえひろこ
会社じゃなく過去を清算したいんです 弁護士さんなら分かりますよね 三田三郎

文フリの前日、大阪・上本町で「川柳スパイラル」大阪句会を開催した。そのときの参加者のひとり、綿山憩が句会の余韻のなかでフリぺ「乱反射」15句を作って文フリ会場に持ってきたので、その中から二句紹介する。

柘榴爆ぜたり 佐藤は偽名  綿山憩
致死量の桜桃三十九粒 薄暮 綿山憩

ブースにはあまり回れず、手に入れそこなったものも多いが、来場の川柳人と言葉を交わすことができたし、『川柳EXPO』の参加者にも何人か直接お目にかかることができた。短詩型文学は作品がすべてなのだけれど、作者に実際に会っておくことにも意味があることと思う。交流の場は大切である。