9月14日(日)に文学フリマ大阪が南港のインテックス大阪で開催された。主催者発表によると、6877人 (出店者:1868人・一般来場者:5009人) の来場があったという。会場近くの夢洲では関西万博が開催中であり、地下鉄中央線は混雑しているので、私はニュートラムを利用して会場に向かった。昨年までの京橋・OMMビルに比べて広い会場だが、ブースの前が見本誌コーナーで、ブースの前を通る人の流れがやや少なくて残念だった。今年は川柳関係のブースが4つ横並びで(1店舗は出店者が欠席で実際には3ブース)、現代川柳の存在感を多少示すことができたかもしれない。
当日手に入れた冊子・雑誌から紹介する。
まず、大阪の人間による大阪アンソロジー『わりかしワンダーランド03』。谷じゃこ・なべとびすこの編集発行で3号目。日本一うるさい街の「音」特集だという。短歌・俳句・川柳などの諸形式の作品と文章が掲載されている。
怒られている人だけ標準語 パスカ
半分が燻製の鈍行列車 中山奈々
電飾の菊人形が攻めてくる まつりぺきん
隠れても述語はふるさとの話 兵頭全郎
ちょっと魔法ほたるぶくろの裏へ姉 木田智美
虫よりも人がこわいと言えないで渦中の虫をひろうざら紙 仲内ひより
連句のブースも出ていて「蔦連句会」の「連句ZINE 蔦」。最近は同人誌ではなくて、ZINE(Magazineのzine)という個人が自由に発信する冊子が好まれているようだ。連句作品、十二調「秋高し」(捌・門野優)から。
秋高し都市の隙間に伸びる影 門野優
十六夜を待つ階段の裏 榊陽子
暇つぶしちゃらちゃら鍵を鳴らしては 山中広海
小豆洗いと会釈をかわす 相田えぬ
藍染の浴衣を着れば母に似て 八上桐子
転生してはまたも初恋 広海
ピアス穴奏でてみればソのシャープ 綿山憩
8句目以降は省略するが、十二調という形式は歌仙のようなオモテ、ウラがなく、式目も比較的自由である。
短歌同人誌「波長」3号を購入。昨年12月の発行だが、上川涼子の歌集『水と自由』を読んで印象に残っていた短歌が掲載されているので、紹介する。「把手」には「ノブ」とルビが付いている。
同じ川に二度は入れず真鍮のちひさき把手を引きてもどれり 上川涼子
「外出」と交流があるらしく、「外出波長無線」のページがある。平岡直子と上川涼子の付合いの部分を引用する。
北口が光ってるしばらくしゃがむ 平岡
何曜日?キッチンに林檎摺る 上川
筑紫口 マスクの中で息をする 上川
火曜日は温泉を隠すの 平岡
「外出」4号の「外出無線」の「波長」版だという。ちなみに「外出無線」は外出同人が2020年6月22日から9月9日まで、自分のいる場所から575と77の応答を繰り返したもの。次はその一部分。
平岡 東京は空中にあり年を取る
染野 乗るよ梅田の大観覧車
内山 柏木公園見上げても梢あるばかり
花山 さざなみがゆく目黒川の面
最後に「外出」14号より。
蛍からそっと光を抜きとって蛍を食べたあの夏のこと 染野太朗
二十四時間不動のままの壁の蛾の体内のはげしさに会いにゆく 内山晶太
これはあと何年くらいやるのかな 顔を塗る 今のところ楽しい 平岡直子
一方的な父からのメールも交通事故のあとは途絶えて 花山周子