川柳誌「湖」6号(4月15日発行)が届いた。編集発行は浅利猪一郎(秋田県仙北市)。
第六回「ふるさと川柳」の選考結果が掲載されている。この誌上大会は浅利が愛知県半田市から故郷の秋田県に帰ってからはじめたもので、「湖」創刊が2015年10月。以後、半年ごとに応募を実施して六回目になる。
選者は12名、合点制で優秀句を決める。今回の課題は「彩」。
私が選んだ佳作と秀句は次の作品である。
秀句1 桐壺の巻にはじまるショータイム 加藤ゆみ子
秀句2 母さんから垂れる色とりどりの紐 北村幸子
秀句3 渋滞も好き山がこんなにきれいだぞ 磯松きよし
佳作 金目鯛の彩で離れて行く平成 明名蝶
みぜんれんよう萌黄れんたいほしょうにん 中西素
って言うか ズタズタの傷うつくしい 松谷早苗
曇天の中で虹を生む実験 ひとり静
オジサンは光彩を放って泣いた 森山文切
「彩」という言葉あるいはテーマに即した句もあれば、「彩」から離れて飛躍した句もある。
よく「共感と驚異」ということが言われるが、共感の句もあれば驚異の句もある。選者は自分の川柳観によって選句するが、ストライクゾーンはできるだけ広く構えていたい。
特選1は「彩」という題から『源氏物語』を連想した飛躍感がすごい。題から離れすぎているかもしれないが、雅俗で言えば「桐壺」の王朝文化は「雅」の世界である。「彩」という題から雅やかな色彩をイメージしたのだろう。そういう雅の世界を「ショータイム」で俗の世界に転じている。「ショータイム」で川柳にしているのだ。
秀句2、女性の着物にはいろいろな紐が付いている。カラフルでもあり、「紐」に象徴的な意味を読むこともできる。杉田久女の「花ごろもぬぐやまつわる紐いろいろ」を連想する。
秀句3、渋滞という嫌な状況を風景を楽しむチャンスとしてプラス思考で捉えている。共感の句である。
佳作「金目鯛」は時事句。
「みぜんれんよう」は言葉遊びのおもしろさ。未然→連用→終止→連体の「終止」のところに「萌黄」という色彩をほうり込んだ。すると意味がねじれて「連体」が「連帯」に変質して「連帯保証人」へと文脈がかわる。なかなかの技である。
「って言うか」の口語調。前にあるはずの文脈が隠されている。
「曇天と虹」は矛盾するものの取り合わせ。
「オジサン」の句は共感して読むのもよいし、漫画的に読むのもよいだろう。
その他の句でおもしろいと思ったものを挙げておく。
花芽好きの白い妖精降りてくる 勝又明城
意に添わぬ迷彩服はお脱ぎなさい 吉松澄子
彩りをください生まれたいのです 森田律子
彩ちゃんが買う組立式織姫 岡本聡
押し寄せる彩りさくらサクラさくら 石橋芳山
『船団の俳句』(本阿弥書店)が届いた。
船団の会会員85人の作品を赤青黄白黒の五つのパートに分けて収録したもの。一人につき15句掲載で解説が付く。五人だけ紹介しておく。
亀鳴くやトロンプ・ルイユ出られない 赤坂恒子
笑わないで産卵の途中ですから 小倉喜郎
鳥の巣に鳥がいるとは限らない 久留島元
ワタナベのジュースの素です雲の峰 三宅やよい
大いぬのふぐりはなにを盗んだか 二村典子
二村典子はなかはられいこの「ねじまき句会」にも参加しているが、おもしろい句を書く人である。
明日(4月22日)は京都で「凜 20年記念のつどい」が開催される。
東京では現俳協青年部シンポジウム「俳句の輪郭」。司会・久留島元。パネリスト、秋尾敏、外山一機、青木亮人、安里琉太。行けないのが残念だが、おもしろそうだ。
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