2016年2月12日金曜日

「発信の時代」をめぐって

5月22日に大阪・上本町で開催する「第二回現代川柳ヒストリア+川柳フリマ」、今年のホームページが出来ているので、ご覧いただければ幸いである。出店の申し込みも受付中。「川柳フリマ」と名のっているが、川柳関係に限定されるのではなく、短歌・俳句・現代詩のどのジャンルの出店も歓迎。ジャンル閉鎖的ではなく、参加者相互交流の場をつくりたいと思っている。「ヒストリア」の面では、川柳句集を何冊か展示する。昨年も展示した川柳鴉組の合同句集『鴉』のほか『中村冨二千句集』、定金冬二句集『無双』、松本芳味句集『難破船』などを陳列。対談ではゲストに山田消児さんをお迎えする。山田さんは惜しまれつつ終刊した「Es」同人。「短歌の虚構、川柳の虚構」をめぐっておもしろいお話が聞けることだろう。昨年同様、投句もできるので、よろしければ投句フォームからどうぞ。

http://senryu17.web.fc2.com/main-2016-01.html

川柳関係のネットでは「川柳スープレックス」が元気である。
メンバーは飯島章友・柳本々々・川合大祐・江口ちかる・倉間しおりの五人。
飯島章友は「スープレックス」1月15日で「川柳カード」10号を紹介したあと、「川柳は発信の時代に入った」と述べている。

「こういうと語弊があるかも知れないけれど、短歌界では有望な書き手にターゲットを絞って仕事を依頼し、歌壇を牽引していく存在に育てようという働きが自然に存在している気がする。人気稼業のタレントじゃねえんだから……、というご意見もあるかも知れない。でも、有能な人材を見出して活躍の場をもうけていくことは、どんな業界でも必要なこと。川柳の世界とて例外ではないとわたしは考える。その意味で昨年、柳本々々さんと榊陽子さんがネット上や各柳誌、フリーペーパーなどで話題になったのを振り返ると、川柳はいい方向に進んでいると感じる。川柳は発信の時代に入った」

これまで川柳における発信と受信はうまく対応していなかった。
昨年9月の「第三回川柳カード大会」で柳本々々と対談したときにもそのことは話題になった。川柳に関心をもった人がもっと川柳作品を読みたいと思ったときに、その入り口が見当たらないという問題である。柳本はこんなふうに語っている。

「たとえば、加藤久子さんの句集の句に高校生が反応したりすることがあるんですよ。さきほども言いましたが、現代川柳は「死」に敏感だから、三十代・二十代を越えて十代にすっと伝わる場合もあると思うんです。ただ、伝わったあとにどうすることもできないという現状があって、加藤さんの句集をどうやったら読めるのかと聞かれても、答えられないんですよ。伝わるかどうかも大事なんですけれど、伝わったあとにそういう空間が準備されているかどうかということが大事だと思っています」

私もこれは早急に何とかしなければいけないと思いながら便々と日が過ぎていくばかりだったが、最近になって柳本自身が「BLOG俳句新空間」36号(2月5日)でその入り口を作っているのに出あった。〈【短詩時評 十二時限目】〈遭遇〉するための現代川柳入門 飯島章友×柳本々々-きょう川柳を始めたいあなたの為に-〉である。この企画について柳本はこんなふうに言っている。

「それでですね、きょうは飯島章友さんをゲストにお招きして、たとえば〈きょう〉こんなふうに〈いきなり〉現代川柳に〈遭遇〉できないかということを飯島さんにお話をうかがいながら模索してみたいと思うんです。〈川柳をまったく知らないひと〉があるひとつのかたちをとおして〈現代川柳をせっかちなかたちでも いいから輪郭だけでもつかめるようにすることができないか〉というのが今回の記事の趣旨です。うまくいくかどうかはわかりませんが、ひとつやってみる価値 があるような気がするんですね」

この問題意識は飯島も共有していて、飯島はこんなふうに問いかけている。

「ところで、自分も少し柳本さんにお訊きしたいことがありますが、よろしいでしょうか? というのも、なかはられいこさんの話をしながら思い出したこと があるんです。自分は2003年になかはらさんらを通じて短詩としての川柳を知るに至ったあと、自分に合った川柳誌を見つけようと思って、インターネット で気になる川柳作家を検索したり、川柳アンソロジーを買ってみたりしたんです。ところが、どうも自分は手際が悪くてなかなか見つけることができませんでし た。柳本さんは自分に適した川柳誌なり川柳グループにたどりつくにはどういった方法がいちばんいいと思いますか?」

以下は柳本の答え。

「私は現代川柳を知ったのが、倉阪鬼一郎さんの『怖い俳句』(幻冬舎新書、2012年)という新書だったんですよ。この本、すごくおもしろい本でして、ほとんどが俳句なんですが、「自由律と現代川柳」という章があって川柳も紹介されているんですね。(中略)
で、これを読んだときに、これはなんだかおもしろい、なんだか自分が今まで知らなかった世界がここにはあると思って、ネットで検索したわけです。(中略)
ありふれた言い方になるけれど、たぶんいまいちばん現代川柳を手軽に知るためには、《気になった川柳作家がいたらともかく一度検索!》なのかもしれませ ん。そうするとかならず、だれかが紹介しています(誰かのことが気になるっていうことは、誰かももう気にしているっていうことです)。そうするとその川柳 作家に似た作風の川柳もそこで紹介されていたりします。すると、芋づる式に現代川柳の〈りんかく〉がわかってくる。そういうふうに、句集やアンソロジーを 〈買う〉というスタイルではなく(なかなか簡単には手に入らない現状もあるので)、自分でさがしながら、自分の分節や感性で現代川柳の《じぶんだけのアンソロジー》をつくっていく。それも最初の段階ではありなのかなあっておもいます」

あと、この記事には手に入りやすい川柳書や川柳句集も紹介されている。川柳への入り口として、行き届いたものになっている。

「スープレックス」はメンバーの個別活動も盛んで、川合大祐は週刊俳句459号(2月7日)に、「檻=容器」10句を発表している。
私がこの10句に一種の感動を覚えるのは、それが「 」という記号を用いた気のきいた表現などではなく、定型に対する川合の問題意識が反映していると感じるからだ。ぐにゃりとした不定形の現実に向かい合うには定型しかない。ここには川合の初心があると思う。

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