2024年12月13日金曜日

「川柳スパイラル」22号

「川柳スパイラル」は22号から誌面が刷新された。飯島章友が同人を降り、新たに6名が新同人として加わった。

宿題でドラ・ハッ・パーを埋める刑  まつりぺきん
屯する稚魚よウィリーで走るのだ   宮井いずみ
まただよ 踊らない貝の絶滅     林やは
整理券もらった順に孵卵器へ     小沢史
これからの夢が怖くて眠れない    猫田千恵子
雪の数百ショット(いま・ここ・だれか) 西脇祥貴

特集は「現代川柳と短詩」(小池正博)。河野春三と山村祐の出会いのエピソードを話の枕に置いて、山村祐の雑誌「短詩」や津久井理一の「私版・短詩型文学全書」などについて紹介している。新たに川柳をはじめる人が増えてきたのにともなって、現代川柳史を振り返る作業が必用になってきている。

すでに雨季 延命のナイフに指紋がひとつ 道上大作
朝 窓を開けると眼前で「形」がすべて流れていた 担ケ真理子
あじさいの息の根とめて「ママ 花束よ!」 吹田まどか

同号では、まつりぺきんが「『川柳EXPO』いかがですか?」を書いている。『川柳EXPO』は、まつりぺきんがインターネット上で呼びかけて、集まった20句の川柳連作を掲載したアンソロジーだが、現在『川柳EXPO』『川柳EXPO2024』の二冊が発行されている。さらに来年は『川柳EXPO2025』も予定されていて、すでに募集が告知されている。早くも応募作品を送った人もいるらしい。2025年版の特徴は二冊に分けて発行することで、それぞれ湊圭伍と川合大祐が選評を書くことが決まっている。なぜ二冊に分けるのか、経緯とねらいについては、まつりぺきんがnoteで発表している。
西脇祥貴の「天網快快TimeLine」では第九回攝津幸彦記念賞・准賞を受賞した太代祐一のことや林やは編集の合同誌「90’s」について取り上げている。この時点では受賞作は未公開だったが、その後発表誌が届いたので、「豈」67号から太代の作品を紹介する。

飛行機は森だった見抜けなかった
注がれて僕の代わりに悶えてよ
片恋が林檎だなんて静電気

選者のうち城貴代美が3点、筑紫磐井が2点を入れている。選評から。
「若い人らしく、口語表現をうまく使って現代の心理をうまく言い留めている」(筑紫)
「ことばのきらめき、眩しいくらいの作品群でした。作者は28歳、さらに言葉の安定に捉われず実験をされることを求めます」(城)
筑紫、城の両人が引用しているのが「片恋が林檎だなんて静電気」の句。俳句の季語に当たるのは「林檎」だが、止めの言葉「静電気」が効果的。俳句としても読めるところが選者の眼にとまった所以だろう。

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