2015年3月6日金曜日

俳句を壊す―「船団」104号

5月17日に大阪・上本町で開催される「現代川柳ヒストリア+川柳フリマ」の準備を始めている。専用のホームページの方もご覧いただきたい。ホームページから出店の申し込みができるが、小池正博まで直接お申込みいただいてもOK。また、ホームページに川柳投稿フォームを設けていて、投句できるようになっている(雑詠1句)。句会を開くわけではないが、当日会場に来られた方々に良いと思う作品に投票していただき、後日集計結果を発表することになっている。ふるって投句をお願いしたい(投句はインターネットのみの受付)。また、フリーペーパーのコーナーを設けるので、配布ご希望の方は当日ご持参いただければ机上に置かせていただく。こちらは出店料無料だが、無料配布となるのでご了解いただきたい。川柳誌のバックナンバーもお持ちいただければ無料配布可能。

さて、俳誌「船団」掲載のエッセイ、芳賀博子の「今日の川柳」は連載29回目。今回の104号は「一の麦」というタイトルで田口麦彦のことを取り上げている。芳賀は熊本まで田口に会いに出かけて、きちんと取材している。『新現代川柳必携』(三省堂)のことなど、田口の川柳活動が紹介されている。「麦彦」という号の由来は、「米」に対抗して「麦」。「日本といえば米でしょ。だったら麦でいこうと。これは私の反骨精神でね」。麦彦さんには5月の川柳フリマにも来ていただくことになっている。

「船団」同号の特集では「座談会・俳句を壊す」が読みごたえがある。関悦史・池田澄子・三宅やよいの対談で、司会は木村和也。刺激的なのは次のような部分。

関 表現しなければならない、場合によっては不愉快なところ、あるいは自分が同じような作品ばかり作ってしまうという批評的な苛立ちがあったとして、その苛立ちを含み込んで乗り越えて俳句として読めるものにする。そういう作業を、俳句形式にぶちあたっていく中で工夫して、最終的に洗練された表現にしていくわけで、それは壊すという方向ではないわけです。書かなければならないものがどこかにあって、その志とか批評性を俳句として洗練された方向にまとめ上げていく。そのまとめ上げるときに、一見壊れるという臨界点にまで踏み込んでいるという緊張感が出てくるんです。
木村 今の論でいくと、「壊す」ということのキーというか基点になるのは批評精神ということでしょうか。
関 そうでしょうね。
木村 それは、もちろん自分の俳句とか、自分の関わる現実とかいうものに対する批評精神といったものが、一見壊すというふうに見えてくるということでしょうか。
関 それともう一つは、俳句の歴史全体に対して。今まで詠まれてきたものと今自分が一緒のことをやっていてはどうしようもないという、自分に対する批評性。

「批評性」「批評精神」をキーにしているところが興味深い。あと、俳句の季語に対して関が「他者性」という視点からとらえていることも私には新鮮な感じがした。次はすべて関の発言。
「一句のなかに季語が入ったら、そこは自分が言いたいことは直接は言えてないわけです。そこに他者性、批評性が入ってくるという形で季語が生かされる」
「俳句の季語っていうのはその、メッセージを担っちゃいけない、何かものの喩え、メタファーになっちゃいけないんですよ」
「無季でやる場合は季語に変わる何かしらの他者性が入ってくるわけですよ」

川柳や連句についても触れられていて、次は三宅やよいの発言。

三宅 私は、無季の句を作ると意味が強くなっちゃうんですよ。だから川柳の人たちと句会をやっているとき、結構無季の俳句つくっていたんです。そうするとやっぱり川柳は季語がないから言葉を強くしなきゃという思いがあるんですよ。川柳は意味だ、っていう意味じゃないんですよ。それだけ言葉の選択っていうのは、季語に代わる強さとか、心情とか直接に訴えた形で言葉を出さなきゃならないから、そのときは一緒にやるときは作ったことありますけど、すごく分裂しちゃうんです自分が。

「俳句と川柳の違い」という話題になると、すぐ「川柳の意味性」で片づけられてしまうが、三宅は川柳人とも交流があるから、意味性で括ることはしていない。三宅は「川柳的っていうとすぐ意味とか、そういうとこに走るけど、決してそういうものでもないと思います」とも発言していて、さすがに現代川柳に対する理解が深い人だと思う。

最後に、古い自分を壊し新しい自分を見出すための突破口は、というような話になって、池田澄子が「私はね、そんな何も思わないの。ただ作る、ひたすら作る」と言っているのは、言葉通りには受け取れないにしても、やはりおもしろい。

座談の参加者はみな実作者だから、具体的な創作のヒントがいろいろ得られる。
自己模倣から抜けだしたいと苦吟している表現者にとっては刺激的な特集である。

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