2010年9月3日金曜日

ねむらん会小史

8月28日に和気鵜飼谷温泉で、「第5回ねむらん会」が開催され、21名が参加した。今回は時評とは少し異なるが、この会の歩みについてレポートしてみたい。

2002年2月、西大寺川柳大会の折に、石田柊馬・田中博造・前田一石・石部明・樋口由紀子の5人は川柳の昔話で盛り上がっていた。その中に、京都の平安川柳社の徹夜句会の話題があり、そのおもしろさを石田柊馬は少年のように眼を輝かせて語った。それでは、眠らないで川柳を遊びながら作る会を開いてみようと、一気に話がまとまったという。

第1回は2002年8月24日に和気鵜飼谷温泉で開催。参加者16名。
第一部は前田一石による句会。「ぎりぎり」「だけど」「たそがれ」の兼題とイメージ吟。ここまでは真面目な句会である。
第二部が石田柊馬による句会。紅白に分かれてチームを作り、キャプテンは赤組・田中博造、白組・石田柊馬。ゲームごとに得点を入れていき、勝敗を競う。勝ち負けがからむと眠気ざましにもなる。
まず始まったのが紙切りゲームで、一枚の新聞紙でどれだけ長いものを作れるかという競争である。続いて、現代詩を書く、スプーンレース、短歌を書く、などがあり、いよいよ恐怖の「三分間吟」が始まる。

  恨んだら百円ショップへ行こう    畑美樹
  人形を越えて人形病んでいる     松永千秋
  花火あげようかコロッケ食べようか  樋口由紀子
  血管の太い九月を逆上がり      駒木根ギイ
  戦いのまず座布団を放り投げ     石部明
  三十秒たつと鼻はふくらむぞ     石田柊馬
  美術館の入場券はバナナです     井出節

翌日は、閑谷学校を観光した。第1回参加の井出節さんは、その後死去されたのが惜しまれる。

第2回は2004年8月28日、場所は同じく和気鵜飼谷温泉。参加者14名。
このときの記録が見つからないので詳細は不明。翌日は伊部を訪れ、備前陶芸美術館などを散策した。

第3回は、2006年8月19日、犬島。参加者19名。岡山県西大寺の小さな漁村から船に乗る。船中でさっそく課題吟「いざなう」が出される。10分で犬島に到着。大正時代には銅の精錬所が繁栄したというが、その跡地は廃墟のようになっている。島は現在、キャンプ場や海水浴で夏場にはけっこう観光客も来るという。
この年の企画で印象的だったのは、『悪魔の辞典』にならって「桜」「うどん」「酒」「台風」などを考えたこと。

  桜 日本人で良かったと思わせるために靖国が増やしているもの。
  酒 人生という砂漠を越えてきた旅人が一番最初に欲しがる液体。ただし量をすぎると友人を    失うこともあるので注意。
  台風 何度も北極点に到着しようと試みるが、ついに一度も成功したことのないひねくれ者。

第4回は2008年8月23日、会場を再び和気鵜飼谷温泉に戻して開催。参加者16名。この時のことは「週刊俳句」71号に「ねむらん会」参加録を羽田野令と野口裕が書いているので、そちらに譲る。

そして、今回が第5回である。2010年8月28日、和気鵜飼谷温泉にて。参加者21名。
午後3時過ぎにホテルに到着。ちょうど地元の祭の日で、ホテル前は老若男女で賑わっていた。人混みをかき分けてチェックイン。5時に出句締切なので、急いで投句し、入浴をすませる。
夕食前にさっそく恒例の前田一石句会。共選方式である。「ミラクル」(石田柊馬・内田真理子)「和風」(野口裕・小西瞬夏)「ほとり」(松本仁・樋口由紀子)「右も左も」(田中博造・吉澤久良)「ん?」(石部明・畑美樹)、ここまでが兼題。年によってはイメージ吟が出されることもあるが、今回は席題「抜く」(小池正博・松永千秋)であった。

  机上のミラクル橋上のミラクル           圭史
  妖怪を和風ランチでたいらげる           仁
  おじいさんのほとりおばあさんのほとり梟のほとり  柊馬
  草刈民代右も左も金属音              彰子
  「ん?」には「ん?」で返してくる糞ころがし     多佳子
  姉ちゃんを抜くのは絶えずひっかかる        あきこ

句会のあと続いて連句に挑戦。

  こぼれ萩眠りの精は眠らない     正博
   草書体にも吹く秋の風       あきこ
  鉄塔とぼくらを汚す青い月      瞬夏
   バイク響かせ裏側へ行く      柊馬
  里山に埋蔵金があるという      久良
   夢の中では西瓜鈴なり       真理子
  空蝉の自転車カゴにしがみつき    圭史
   不正受給もやむをえぬ仕儀     久良
  ばあさんはベッドの下で寝ています  由紀子
   赤ずきんやら青ずきんやら     久良
  花散って空襲警報鳴り止んで     圭史
   連れ立つときは四月一日      柊馬

ここまでで午後7時少し前。ようやく夕食・宴会となる。
午後8時から体操・ゲームタイム。
石田柊馬による頭の体操の出題は、毎回趣向を凝らしているが、今回は「①乗っていた飛行機が墜落するとき作った歌」→「②奇跡的に墜落を免れたときの一句」→「③生還した機長の記者会見での一句」という関連のある課題がおもしろかった。

  ①落ちてゆく落ちてゆくふっとトンボの目玉になって  千秋
  ②親指を噛んでしんしんする安堵           瞬夏
  ③道連れにするにはちょっと多すぎた        由紀子

また、写真を見ながらシナリオを書くという新趣向もあった。
いよいよ三分間吟が始まる。「ボタン」(畑美樹)「屋」(樋口由紀子)「裏」(前田ひろえ)「樹」(吉澤久良)「手首」(湊圭史)「高」(たむらあきこ)「真ん中」(石部明)「雲」(田中博造)「声」(小西瞬夏)「逃げる」(斉藤幸男)「虫」(岩田多佳子)「詐」(野口裕)「サラサラ」(なかむらせつこ)「こつんこつん」(岩根彰子)「椅子」(内田真理子)「爪」(松永千秋)「含む」(小池正博)「血潮」(松本仁)「戸」(石田柊馬)「あ」(前田一石)と次々に席題が出されていく。席題が発表された瞬間からストップウォッチで計られる三分間ひたすら句を書き続ける。軸吟はなし。1人で10句書く人もいる。1句を18秒で書く計算になる。平均5句くらいは書いただろうから、1人当たり100句以上になるだろう。句箋が足りなくなって、選が終った分の没句の裏に書いたりした。「下手な句の裏に書くと、こっちまで下手になる」とぼやく人も。参加者20人だから、5人終ったところで選句と披講。これを4回繰り返す。自分が何を書いたか覚えていられないから、句箋の字を見せられて呼名する人も多い。
このレポートを書くために、秀句を記録しておくつもりだったが、ふと気がつくと作句に夢中になっていて、それどころではなかった。
この三分間吟は無意識を開放して書いているから、本能的な自分の句が出る。普段は推敲によってマンネリ化した自分の癖を直したり、それを越えるものを目指したりするのだが、三分間ではそんな余裕がないから、旧来の自分の句が突然出現したりする。仕方なくそのまま出すのである。
三分間吟が終って、午前5時前に布団にもぐりこんだ。午前7時には起床。前田一石はすでに早朝句会の準備に余念がなかった。

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