2025年12月19日金曜日

2025年回顧(連句篇)

ある連句人の一年を日記ふうに紹介する。

2025年1月5日(日)
第17回わかやま連句会。和歌山城ホールにて開催。出席者8人。 「国民文化祭わかやま」のあと2022年に発足した連句会で、奇数月の第一日曜に和歌山市で開催されている。毎回、和歌山ゆかりの文学者・文化人についての話があり、そのあと連句実作を行っている。この日は初句会なので、連句のルールについて確認をした。
  新しき海へ漕ぎ出す日記始    宏
(ちなみに3月以降の例会では、高野聖、祇園南海、「小梅日記」、浜口梧陵、佐藤春夫の『車塵集』を取り上げた。)

1月13日(月・祝)
京都府連句協会新年会。京都府連句会は古都連句会、ふたば会、三金会、千代の会の4グループがあるが、全体会として新年会のほか春の陣(3月)、五山送り火連句大会及びみやこの陣・夏の陣(8月)が開催されている。

2月2日(日)
第48回大阪連句懇話会。京都・旧三井下鴨別邸にて開催。下鴨神社近くの雰囲気のある建物の二階で、連衆15名。この会場はなかなか予約がとりにくいが、たまたま冬の時期に予約できた。実作はすらすらと歌仙一巻を満尾。
  春隣糺の森に集いけり  正博
終了後、賀茂川と高野川の合流地点の三角公園で時間を調整したあと、懇親会。

2月15日(土)
わかくさ連句会。JR奈良駅前の「はぐくみ文化センター」にて開催。奈良県連句協会では「わかくさ連句会」「あしべ連句会」が開催されているが、私は「わかくさ連句会」の方に時々参加している。連句会の前に猿沢の池の前にある喫茶店で珈琲を飲むのも楽しみのひとつ。

   隠国の長谷の青空山芽吹く 
   名残の雪の細き街道   

3月9日(日)
「連句海岸」開催。2023年から年に2回程度、明石の林崎松江海岸「CURRY HOUSE Babbulkund」にて開催されている連句会。当日は3座にわかれて連句実作。「連句海岸」については門野優氏のnoteに記事が掲載されているので検索してください。
連句会終了後、明石の魚の棚に繰り出して懇親会。

3月23日(日)
日本連句協会総会・全国大会。深川の芭蕉記念館にて開催。総会のあと7座にわかれて連句実作。
(日本連句協会発行の「会報 連句」8月号に記録が掲載されている。)

5月15日(日)
第二回関西連句を楽しむ会。大阪上本町・たかつガーデンにて開催。
1990年代から2000年代にかけて、近松寿子(茨の会)・岡本星女(俳諧接心)・品川鈴子(ひよどり・ぐろっけ)・澁谷道(紫薇)の四氏によって「関西連句を楽しむ会」が運営されていたが、2006年を最後に中断。以後、関西の連句グループはそれぞれ独自の歩みを続けているが、昨年「第二次関西連句を楽しむ会」として再出発した。第二回の今回は、ゲストに鈴木千惠子氏(「猫蓑会」会長)を迎えて「式目の研究」のトーク。途中から、門野優・山中広海・相田えぬ・綿山憩など若手連句人が対話に参加した。
若葉風吹くや西から東から   正博
来年の第三回目は会場を須磨寺に移して5月17日に開催予定。

7月27日(日)
義仲寺にて同人連句会開催。毎月第四日曜日に開催されている。
私は年に2回程度参加。歌仙を巻く貴重な機会で、膝送りが多く、付句の練習になる。

8月18日(月)
みやこの陣・夏の陣、開催。五山送り火連句会の方には参加できなかったが、各地の連句人が京都に連泊して連句を楽しんでいる。私は日帰りで参加。

10月4日(土)
第35回さきたま連句会。川口市メディアセブンにて開催。この連句大会にははじめて参加する。いささか旧聞に属するが、川口市は映画「キューポラのある街」で有名だ。駅周辺を散策。
  爽涼やベッドタウンの東口  正博

10月13日(月祝)
第19回浪速の芭蕉祭。大阪天満宮・梅香会館にて開催。
浪速の芭蕉祭は2007年にスタート。創始者は岡本星女。第二回以降、二年に一回、形式自由の作品募吟を行ったが、募吟は第10回で終了。以後は、ゲストとの対談と連句実作というかたちをとっている。 当日は12時半から本殿参拝の予定だったが、参拝者が立て込んでいて少し遅れる。祝詞や巫女の舞う神楽などがあり、私は例年、玉串奉納をしているが、はじめて参加する方には新鮮な経験だろう。「技芸上達」の絵馬を所定の場所に掛ける。今回はゲストに、まつりぺきん氏を迎えて「ネットを利用した作品の募集と発信」について対談。連句ではネットを利用した発信がまだ弱いようだ。
  繁盛亭月はどっちに出ているか  正博

11月21日(金)
大分県民芸術文化祭「連句大会」。中津市民文化会館にて開催。
大分県の中津は福沢諭吉ゆかりの地として知られている。はじめて訪れたので、大会開催までの時間に街中を散策。早朝なので福沢諭吉記念館はまだ開いておらず、中津城も外観だけ眺めることができた。天守がちょうど東を向いて立っているのが印象的だった。
  冬の城朝の光を浴びて建つ  正博

12月13日(土)
文京区民センターにて草門会。このところ参加できていなかったが、翌日の俳諧時雨忌とあわせて東京に二泊三日する。今年最後の連句三昧。途中までだった歌仙の続きを巻き上げたあと、捌きをするよう言われたので、非懐紙を巻く。
  歳末や胸に飾りをつけながら  正博
『野ざらし紀行』の「年暮ぬ笠きて草鞋はきながら」を踏まえたつもり。
ふだんやらない「季移り」の句が出て勉強になった。

12月14日(日)
俳諧時雨忌。芭蕉記念館にて開催。長年、草門会が主催してきた歴史のある連句会だが、昨年から日本連句協会の主催となった。宿泊した両国から芭蕉記念館まで徒歩で移動。あいにくの雨だが、この日は討ち入りの日である。吉良邸のあたりに義士会のテントが出ている。途中、要津寺に立ちよる。ここは嵐雪一門の拠点で、嵐雪墓、雪中庵供養碑などがある。 連句会では旧知の人たちと一座できて、雑談しながら楽しく歌仙を巻くことができた。連句は座の文芸なので、一巻を巻くと同時に、各地の連句人との交流が大切になる。旧交をあたためるだけではなく、新しい人との出会いもあるのが共同制作の魅力である。