2023年1月20日金曜日

文学フリマ京都7

1月15日(日)に「文学フリマ京都7」がみやこメッセで開催された。京都の文学フリマもすでに7回目になる。主催者の発表では出店者・一般来場者あわせて2424名の参加者があり、うち出店者は約615名だったという。
「川柳スパイラル」からも出店し、川柳句集のほかに連句関係の『現代連句集Ⅳ』も販売した。久し振りにお目にかかる方やはじめて川柳のブースを訪れた方ともお話しができてよかった。今回は文フリ当日手に入れた冊子を紹介していきたい。

「西瓜」第7号は江戸雪をはじめ15人の歌人が集う同人誌。
笹川諒「白く複雑な街」は最初に詞書があって次のように書かれている。

こころに白い街を広げながら暮らしている。
白さと複雑さがたびたび同義であることは、優しいことだと思う。

デイリードリーマー 学んだ知識から致命的なひとつを引くのが得意  笹川諒
もし過去に戻るとしたらあの夜に英詩の訳の課題はしない
みなそれぞれに芸術を砥ぐこの白い街の夕べはすべてあなた

三田三郎「ZOZO臓」から。

単に酒が管を通過するだけなのに酔いという脳の自意識過剰   三田三郎
内臓で野球チームを作ったら肝臓はきっと2番セカンド
肝臓を連れ戻したら説教する「辛いときこそ逃げちゃいけない」

三田と笹川の「ぱんたれい」3号が3月には出るそうなので楽しみだ。
もう少し「西瓜」の作品を紹介しておく。

サンドイッチに何を挟むか聞きたくて話が途切れるのを待っていた  嶋田さくらこ
風の音飛行機の音 何の音だろうね答えが欲しいのじゃなく    とみいえひろこ
岬まで行こうと歩きだすきみは岬に胸があるように行く       江戸雪
永遠など気持ちが悪い寝転んで喉から奥へ流れる鼻血        虫武一俊
これ以上モラトリアムをこじらせてどうする蟬の抜け殻を踏む    土岐友浩

次に「ぬばたま」7号より。

駆け上る必要はない階段も駆け上がり これ から どうしよう?  乾遥香
話してもオタク友達相手にはあなたを推しと呼ばないでいる     大橋なぎ咲

「ぬばたま」は1996年生まれによる短歌同人誌。同人は現在25~26歳。「ぬばたま世代のリアル」という特集が組まれている。「短歌の友だちいる?」「賞のことどう思ってる?」「結社楽しい?」「あなたの中での総合誌の位置づけは?」「ポリティカル・コレクトネスとその周辺について、ひとこと。数年前の歌壇と比較して何か変わった感じする?」などの質問に同人とゲストの髙良真実が答えている。「短歌ブーム」についてどう思う?という質問には私も興味があるので、書きぬいておく。「なんでブームなんだろうね。純粋読者が増えたのか、他ジャンルの文芸の人たちが短歌を買いはじめたのか、両方?」「もう10年位言われてませんか?」「あんまりブーム感じてない」「SNS(特にツイッター)に合うからかな~」「ブームでたくさん短歌に関する本が出るのはうれしいが、質が保証されないものもあるので最低限は維持されてほしい」「短歌botのフォロワー数の増加を見て、ほんとにブームなんだなと思いました」など様々な見方がある。

俳誌「翻車魚」6号。巻頭に細村星一郎・白野・奥村俊哉による「リアルタイム共作」として俳句10句が掲載されている。次のような作品。

人型兵は朧の猿にしか撃てない
文脈になかった化粧水を買う
三日前なら馬だった桃源郷

Googleドキュメントを利用し、三人の意志で10句連作を完成させたという。まず「猿」「化粧水」「三日」などの単語をドキュメント上の一枚のシートに書き込む。共作者がフレーズを加え、一句が出来上がっていく。「化粧水」に対して「文脈に沿って化粧水」というフレーズがある時点では付いていたが、最終的には掲出句のかたちで三人が合意。「三日」の場合は「三日前なら馬だった」というフレーズに共作者のひとりが「桃源郷」の語を書き込み合意される。プロセスはもっと複雑なようだが、共同制作における連句の三句の渡りや天狗俳諧とはまた違った試みである。
高山れおな「『尾崎紅葉の百句』補遺」が掲載されているのに注目した。高山は『尾崎紅葉の百句』(ふらんす堂)を出したばかりだが、そこには紅葉のいろいろな傾向の句が収録されていて興味深い。

鯨寄る浜とよ人もたゞならず  尾崎紅葉
渾沌として元日の暮れにけり
星既に秋の眼を開きけり
二十世紀なり列国に御慶申す也

『百句』には「紅葉が俳句でめざしたもの」という解説が添えられているが、「翻車魚」の「補遺」ではでは紅葉の句について「新年の句が妙に充実している」「挨拶句が巧い」「女性に視線を向けた句が多い」という三点を挙げている。高山が「補遺」に挙げている句から。

瓦屋根波も静に初日かな    尾崎紅葉
過ぎがてに草摘み居るや小前垂
火を吹くや夜長の口のさびしさに
葱洗ふ女やひとり暮れ残る

最後に「翻車魚」掲載の佐藤文香「愛のほかに」から。

海を来てこの街を迂回する冬      佐藤文香
こゑで逢ふ真夏やこゑは消えるのに
Farmers market 蜂蜜がある愛のほかに

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