2021年4月16日金曜日

ポスト現代川柳の台頭―暮田真名・柳本々々・川合大祐

×月×日
ネットプリント「いくらか」をコンビニで印刷。佐原キオと暮田真名の川柳が各20句掲載されている。どれもおもしろいが、二句ずつご紹介。

風のおかげでどんな無聊もよく燃える  佐原キオ
鼎談をする精神がなぜ白い       佐原キオ
代わりにテオと暮らしてあげる     暮田真名
京都ではくびのほきょうを忘れずに   暮田真名

引用句からだけでは分からないが、佐原は旧かなづかいで書いている。現代川柳は口語・新かなを主とするが、文語や旧かなを使う場合には何らかの意図があるはずだ。それはそれとして、佐原の句はきちんと現代川柳になっている。短歌的なものの川柳への流入や短歌の私性の安易な持ち込みに対して私は否定的だったが、今の歌人の書く川柳はそういうものとは異なり、ツボを心得た表現は川柳としてのクオリティが高いと感じる。
暮田の句からは固有名詞と地名を使った句を引用してみた。テオはゴッホの弟のことかも知れないし、ほかの誰かかもしれない。京都に対する諷刺は、たとえば渡辺隆夫の「うそ八百京都千年にはかなわん」(『都鳥』)を思い出させたが、暮田の句にも十分川柳性が強く表れている。
「文学界」5月号に暮田は「川柳は人の話を聞かない」を掲載している。「ねむらない樹」6号で彼女は「川柳は上達するのか?」と書いているが、この「川柳は…」シリーズはこれからも続くらしい。私は以前「川柳人どうしがいっしょにいて少しも飽きないのは、ずっと自分のことばかり話しているからである」というアフォリズムを作ったことがあるが、暮田が言っているのは「川柳人」のことではなく、「川柳」のことなのだった。

×月×日
「早稲田文学」2021年春号(特集「オノマトペにもぐる/オノマトペがひらく」)に川合大祐と柳本々々が作品を掲載している。川合は「バイオハザード」、柳本は「ここはぴなの?」というタイトルで、柳本の作品から二句ご紹介。ほかに初谷むいや野間幸恵の作品も掲載されている。

やあ、とぴっはいう。また会えましたね。  柳本々々
あなたはぴっをいつもわすれるよね うん

×月×日
先日、アルマ・マーラーの『グスタフ・マーラー』を読む機会があった。21歳でマーラーと結婚したアルマが31歳で彼と死別するまでの回想が書かれている。アルマは毒舌家でずいぶんはっきりと自分の意見を言う女性だった。
ドイツ文学の世界では精神性の高い魅力的な才能をもった女性がときどき現れる。ニーチェの恋人だったルー・アンドレアス・ザロメはリルケとも交流があったし、後にはフロイトに師事した。アルマもそのような女性のひとりで、画家のクリムトやココシュカも彼女に恋をしたと言われる。ドイツ表現主義の画家、オスカー・ココシュカの「風の花嫁」はアルマをモデルにしている。

ココシュカの《風の花嫁》を飾るだろう死後の白くて無音の部屋に  笹川諒

×月×日
江田浩司歌集『律―その径に』(思潮社)が届く。短歌と詩のコラボなどがあって全貌は紹介しにくいが、第四章から二首引用する。

そのうたは深夜にひとりあるきする尾をひくこゑにあきらけき叛
いまそこにある悦びをひきよせて溺れてゆかなあぢさゐの世を

岡井隆への追悼として「О氏に」と題された歌から一首。「詩」には「うた」、「蜻蛉」には「せいれい」のルビがふられている。

さまよへる詩のゆくへをたづねたり遅れて来たる蜻蛉として

×月×日
川合大祐の第二句集『リバー・ワールド』(書肆侃侃房)が刊行された。1001句の川柳が三章に分けて掲載されている。ツイッターなどで反響が出ているし、アマゾンの句集ランキングでも上位にあり、好評のようだ。ここでは二句だけ引用しておく。

道 彼と呼ばれる長い神経路   川合大祐
自我捨ててただ晴れた日の紫禁城

刊行記念として、5月7日(金)の20時から本屋B&Bのオンライン配信で川合大祐・柳本々々・小池正博によるトークイベント「現代川柳ってなんだ!」が開催される。どんな話になるだろう。

×月×日
川柳「湖」12号(浅利猪一郎川柳事務所)に第12回「ふるさと川柳」の受賞作品が掲載されている。浅利が秋田県で発行している柳誌で、12人の選者による共選。今回の兼題は「天」。入選1点、佳作2点、秀句3点を配点して、それぞれの選者が入れた合計点により順位を決定する。最優秀句は次の作品で8点を獲得している。

天啓を銜え野良猫やってくる   川田由紀子

ちなみに私が選んだ秀句は次の三句。

本当はしんどい天然の私    川内もとこ
天の川彦星さえも熱がある   鈴木昌代
あなた誰いつか天使になる怖さ 原佑脩二

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