2014年4月4日金曜日

桐生と土佐 ―「ku+」のことなど

「ku+」(クプラス)が創刊された。
昨年9月の「第2回川柳カード大会」、佐藤文香と樋口由紀子の対談でも話題になっていた俳誌である。好評のようで、すでに創刊号は品切れ状態。現在、増刷中だという。
読みどころはいろいろあるが、ここでは山田耕司の〈流産した「番矢と櫂の時代」をやっかいな鏡とする〉を紹介しよう。
1987年、飯田橋の旅館の一室に九人の俳人が集まった。これを小林恭二は「新鋭俳人の句会を実況大中継する」という題で発表、のちに『実用俳句青春講座』に収録されるが、山田耕司はこの句会のことから話をはじめている。
〈山田は、その当時の「顔」となる若手俳人は、番矢と櫂、この二人だと思っていた〉
そして、山田は小林の役割について次のように言う。
〈小林恭二は、あきらかに外からのまなざしを以て俳句の状況をながめていたはずだ〉〈旧来の俳句世界とは別のところにいる読者へのアプリケーションの役割をじゅうぶんに果たしたことだろう〉
夏石番矢と長谷川櫂。〈それは俳句が外側からの注視を受けていた時代の象徴となるはずだった。それまでの世代との関わりや、過去との断絶の現場を検証するための眺めのいい場所は、二人の周辺に形成されるはずだった〉
それでは、なぜ番矢と櫂の時代は成就しなかったのか。山田は結論を出していないが、こんなふうに述べている。
〈我等は、「人間的で」「めんどくさそうでもない」人間関係および従来の権威の枠組みの中で、自分の固有性をおぼろげながらに信じつつ形式の表層と付き合ってきたということになるのか〉
「クプラス」の発行人は高山れおな。編集人は高山・山田・上田信治・佐藤文香。発行所は桐生の山田方になっている。

高知から発行されている「蝶」という俳誌がある。
たむらちせいを中心とし、代表・編集は味元昭次。
私の手元にあるのは昨年11月に発行された204号だが、「川柳木馬」同人の西川富恵が「現代川柳の現場から」という文章を書いている。西川は多様な現代川柳を紹介したあと、次のように言う。
〈今川柳は文学性を極めようとすれば際限なく先鋭化し、堕落が始まれば底なしになるやも知れぬ。無限の可能性か破綻か。が、ここでは危ない綱渡りをしながらも無限の可能性に向かっている事にしておこう〉
歯切れの悪い言い方であり、私とは少し考え方が異なるが、西川の言おうとしていることは理解できる。「無限の可能性」でもなく「破綻」でもなく、着実に進んでゆくことが現代川柳の課題である。
「蝶」には今泉康弘が「新興俳句随想」を連載している。「ドノゴオトンカ考」以来、今泉の書くものには注目しているが、今泉と「蝶」との俳縁は、味元が「円錐」にも所属していることによるだろう。
味元は「私的俳句甲子園観戦記」を書いている。昨年八月の俳句甲子園について土佐高校を中心にレポートしたものである。
土佐高校の俳句同好会を牽引していると思われる宮崎玲奈の句を紹介しよう。

蓮池の花影ピエロかもしれぬ    宮崎玲奈
魔術師の帽子からでた夕焼空
内部犯行説の団栗散らばりて

4月19日(土)に高知市文化プラザで「第3回木馬川柳大会」が開催される。「川柳木馬」創立35周年記念大会である。その第一部のテーマは「ありえない17音字に逢えるかも」。味元昭次と小池正博がそれぞれ15分ほど話すことになっている。

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