2018年9月22日土曜日

第六回文フリ大阪のことなど

9月9日に「第六回文学フリマ大阪」が開催された。
前回まで中百舌鳥の産業振興センターで行われたが、今回から会場が変わり、天満橋のOMMビル・会議室で開催された。会場が広くなったせいか、例年より参加者がまばらのように見えたが、実際には1794名の参加者があり大阪開催史上最大だったそうだ。
「川柳スパイラル」は唯一の川柳ブースとして出店し、「川柳スパイラル」1~3号、『川柳サイドSpiral Wave』2・3号、「THANATOS」4号などを店頭に並べた。川柳人の姿はほとんどなく、他ジャンルの実作者や読者が来店。文フリに出店する意味が歌人・俳人に川柳作品を発信することに限定されてきたようだ。
「THANATOS」は石部明を顕彰するフリペとして発行してきたが、今回の4号で終了となる。50句の選定と石部語録を八上桐子が担当し、石部論を小池正博が担当。装丁は宮沢青。

黄昏を降りるあるぜんちん一座    石部明
諏訪湖とは昨日の夕御飯である
鳥籠に鳥がもどってきた気配

また、当日は榊陽子がフリペ「虫だった。③」を作成。新作18句と自句をプリントした栞をおまけとして配布した。この栞の裏には虫が這っている絵が描かれていて、おもしろいというより気持ちが悪い。

モーリタニア産のタコと今から出奔す  榊陽子
鉛筆を集め楽しい性教育
紙の犬ならば舐めても問題ない

当日、購入したものをいくつか紹介しておきたい。
まず歌集『ベランダでオセロ』。御殿山みなみ・佐伯紺・橋爪志保・水沼朔太郎の四人による合同歌集。各百句収録。

よくはねてジョニーと呼べばまたはねて典型的な寝ぐせですなあ  御殿山みなみ
負けたてのオセロに枠を付け足してその枠が敷物になるまで    佐伯紺
三月があなたを連れ去ってゆくなら花びらまみれになってたたかう 橋爪志保
母親に彼氏ができる 母親が結婚をする 父親ができる      水沼朔太郎

「うたつかい」のブースで「うたつかい」31号と「短歌の本音」をゲット。最近、短歌の人と会う機会が増えてきたので「うたつかい」の参加歌人一覧は便利だ。牛隆介が文フリなどの「コミュニケーション疲れ」について、「もうあらゆる短歌の場は次のフェーズに移行できるのではないか」「コミュニケーションを持ちながらも、その関係に縛られず、買いたいものを買い、読みたいものを読むという態度」「文学フリマのブースに遊びに来てくれるのは嬉しいが、同人誌は買わなくてもいい」「謹呈する側に立った時も読んでもらいたい人に送ればよく、付き合いで謹呈する必要はない。そしてその上でコミュニケーションは揺るがない」と書いているのに納得した。
最後に、谷じゃこと鈴木晴香の『鯨と路地裏』から。

二十年そこらではまだ美化されず公衆電話の台だけ残る   谷じゃこ
バス停でバスを待つほど透明な人間に成り果ててしまって  鈴木晴香

「川柳スパイラル」関係で9月はいそがしく、9月1日に東京句会、9月16日に大阪句会を開催した。
東京句会は「北とぴあ」で実施。
初参加の人が何人かいて、新鮮な感じで話し合いができた。ツイッターや文フリを通じて知り合った人たちと句会の場でごいっしょできるのは嬉しいことである。
前半は「川柳スパイラル」3号の合評会で、特集「現代川柳にアクセスしよう」について感想を聞く。この特集は成功したのかコケたのか。
自由律俳句「海紅」の方の参加もあって、韻律の話も少し出た。
「川柳スパイラル」の会員欄に七七句を投句している本間かもせりは自由律俳句の作者でもある。七七句(十四字)は自由律ではなく七七定型だが、山頭火などの自由律俳人にもこの形式が見られる。七七句(短句)で四三のリズムが嫌われるのは連句の慣習で、一部川柳人のなかにも四三の禁を言う者がある。短歌の下の句における四三については、斎藤茂吉が四三の禁を過去のものとして論破してから何ら問題にはならない。
七七句は連句の短句に相当するので、本間かもせりが連句へと関心を広げてゆくのは当然の道筋だろう。
大阪句会は「たかつガーデン」で開催。今年五月の東京句会で知り合った鳥居大嗣が参加。鳥居は「AIR age」VOL.1の「コトバ、ことわり、コミュニケーション」で瀬戸夏子論を書いている。

8月25日に「第24回大阪連句懇話会」で「漢詩と連句」の話をして、小津夜景著『カモメの日の読書』を紹介した。その後二座に分かれて連句を巻いた。
10月6日に大阪天満宮で開催される「第12回浪速の芭蕉祭」では高松霞を招いて「連句ゆるり」の話などを聞くことになっている。
翌日の10月7日には「連句ゆるりin大阪」が開催されるという。その会場となる「Spin off」は岡野大嗣が運営するスペース。東京では書店B&Bとかブックカフェとかが増えているそうだが、大阪でも人が集まって文学の話ができるスペースがいろいろできればいいと思う。
私は川柳と連句の二足の草鞋をはいていて、これまではこの二つを分けて活動してきたが、最近では川柳と連句の人脈が混ざってきて相互刺激的な交流が生まれはじめている。

「現代短歌」9月号の特集は「歌人の俳句」。
「なぜかそれは短詩だった」(田中惣一郎)、「子規の俳句」(福田若之)、座談会「二足のわらじは履けないのか?」(神野紗希・東直子・藤原龍一郎・小林恭二)など。
そういえば、第6回現代短歌社賞は、門脇篤史「風に舞ふ付箋紙」に決定したそうである。

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