「川柳スパイラル」3号では「現代川柳にアクセスしよう」という特集を組んでいる。
現代川柳に関心のある人は潜在的に多いと思われるが、従来の川柳入門書ではカバーしきれない部分がある。特に結社に所属していない人、川柳以外のジャンルの実作者で川柳にも興味のある人、SNSを通じて川柳に触れてみたい人などにアクセスの入り口を呈示することには緊急性があるのではないかと思った。
飯島章友の「現代川柳発見」は「川柳グループに入るメリット」「川柳グループを選ぶ際の基準」「各種川柳文献の紹介」「便利なウェブサイトの紹介」など、丁寧に説明・紹介している。
川合大祐の「『二次の彼方に―前提を超えて』は対話形式で、二次創作についてだけではなく、世界を認識することは「型を与えたいという欲望」に裏打ちされている、という川柳の本質論にまで及んでいる。
柳本々々と安福望との対談「川柳を描く。となんかいいことあんですか?」は川柳と絵を描くことをめぐって多彩な話題が展開されている。紙数の関係で安福のイラストが掲載できなかったのが残念だが、安福ファンの方は連載「おしまい日記」の方のイラストをご覧いただきたい。
小池正博「五つの現代川柳」は「サラリーマン川柳」「時事川柳」「伝統川柳」「私性川柳」「過渡の時代の川柳」の五つの川柳が同時並行的に存在している現状を、現代川柳史の観点から整理したもの。川柳用語と句会のやり方についても説明している。
現代川柳にアクセスする方法はいろいろあってよいと思うが、ここではネット川柳の動きのいくつかを紹介しておきたい。
まず、飯島も紹介している「毎週web句会」は川柳塔の森山文切が運営しているウェブサイト。ネット句会は今までにもあったが、毎週更新というのはすごい。「川柳スパイラル」3号、飯島の連載「小遊星」でも対談者として森山が登場している。そこで森山は次のように語っている。
「私が運営している【毎週web句会】では、30万アクセス記念句会において没句も含めて全投句を公開し、なぜ入選か、なぜ没かを選者同士で議論する企画を実施しました。賛否両論いただきましたが、私が今後行いたいことはこのような議論ができる仕組みをwebで提供することです。議論が「川柳」を活性化すると思います」
このweb句会では川柳人だけでなく、川柳に関心のある歌人の投句も増えてきているようだ。ハンドルネームが多いので誰だかわからないところもあるが、webではまず歌人が川柳に関心を示す傾向があり、そこからオフ句会でも短歌と川柳の交流が進展してゆけばおもしろいと思う。
最近、ツイッターでよく見かけるものに「いちごつみ」がある。前の人の句から「一語」とって自分の句に入れて作り、これを一定の句数繰り返すというもの。短歌で流行っていたものを川柳でもやってみようということらしい。おもしろそうだと思えばジャンルを越えて流行してゆくのだろう。最近話題になった、森山文切と川合大祐の「いちごつみ川柳」から。
中指を般若の口に入れている 文切
入れているふしぎの海のナディア像 大祐
掲出句は私の好みで雑排の「笠段々付」に似たものを引用したが、「一語」は前の句の下五ではなくどの語をとってもよく、次の句のどこに入れてもよい。ただし、一語の摘み方には細かいルールがあるらしい。
Botというものもある。作品を打ち込んでおけば、一定間隔で自動的にツイートしてくれる。自分の作品だけをBotで配信する人もあるが、「現代川柳Bot」(くらげただよう)は現代川柳のさまざまな作品を発信している。
短歌のBotは以前からあり、川柳はどうかと検索してみたが「古川柳Bot」しかなく、がっかりしたことがあるが、いつのまにか「現代川柳Bot」が出来てびっくりした。今ではすっかり定着したようで、くらげただようの功績は大きい。短歌とは違って、句集やアンソロジーが広く流通しているわけではないので、作品の収集が大変だろう。
SNSではないが、ネットプリントという発信手段もある。
最近おもしろかったのは「当たり」vol.5の暮田真名の作品。
恐ろしくないかヒトデを縦にして 暮田真名
「恐ろしくないか~して」という文体は川柳では既視感がある。でも、ヒトデを縦にしたのには驚いた。恐ろしくもあり、おかしくもある。
ネット空間にはさまざまな作品が飛び交っている。そのすべてに可能性があるわけではないが、自分が気に入ったものにアクセスしてみるのは楽しいことだろう。たとえば、川柳や自由律の一形式に七七句があり、これに五七五をつければ前句付や連句になってゆく。
「ネット川柳」と「紙媒体の川柳」のリサイクル・リユースが求められているように思う。
0 件のコメント:
コメントを投稿