国民文化祭・長崎(ながさきピース文化祭2025)「連句の祭典」の入選作品集が届いたので紹介しておきたい。形式は半歌仙で、485巻の応募があった。一般の部、文部科学大臣賞は半歌仙「潮騒」の巻(奈良県、捌・嵯峨澤衣谷)。
潮騒も静寂となりぬ憂国忌 嵯峨澤衣谷
紅葉挟んだ読みかけの本 春野 彼方
窓を開け名残りの月を眺むらん 衣谷
微かに揺れる軒の鳥籠 彼方
(以下略)
五人の選者のうち二人が特選に選んでいる。
高尾秀四郎は選の観点として、次の六点を挙げている。
①発句の訴求力、完成度
②オモテ六句のオモテぶり
③ウラに入る転じの上手さとその後の暴れぶり
④琴線に触れるような情のある恋の場面展開
⑤味わいの佳句の有無
⑥見事で爽やかなエンディング
また、鈴木千惠子は半歌仙のあり方について、一花二月で構成されるが、応募作のなかには正花が二つ詠まれているもの・月が面ごとに一つずつが守られていないものがあり、許容できない。また応募作全体について、発句に一巻の牽引力があり、表六句が穏やかでありながら魅力的なものに惹かれる。月・花・恋の句にも注目、付けと転じの妙が大切、半歌仙を十八歩と考え一歩も後に帰る心のないものを選んだと述べている。
国民文化祭実行委員会会長賞は半歌仙「ゆゆゆ」の巻(愛知県、捌・瀧村小奈生)
光ゆゆ風もゆゆゆの猫柳 瀧村小奈生
くすぐつたくて笑ふ山々 清水ましろ
トラックの荷ほどきの声うららかに 金子 ユリ
地図を片手に歩く路地裏 小奈生
(以下略)
「発句や付句の感覚がおもしろく、フィーリング付という感じ」(小池正博の選評)
選者によって連句観は異なるとしても、連句評価の基準はそれほど違わないと思われるが、基準を適用するするときの感覚の差はどうしても表れてしまうようだ。
徳島の連句グループ「花音」(はなおと)から連句集『花音』第十二集が届いた。
「花が開く時、人の耳には聴こえなくても、きっと小さな小さな音がしているのではないか。それを聴いてみたいものである」(三輪和「はじめに」)
新形式「花音」は「箙」(六・六・六・六の二十四句形式)を基本とするが、各面に花と音、正花は一つ、月は二としている。
パワハラがスポーツ界に蔓延し
自然の秩序守り月冴ゆ
蝋梅は一斉に咲き香り立ち
写真撮影フラッシュを焚く
ルンルンの婚前旅行ハワイへと
泡のごとく消ゆるときめき
三句目が正花ではない花、四句目が音になっている。
これをさらに発展させて、最後に二句のコーダを付けたり、一連の句数を六句から四句へとコンパクトにするなどの試みをしているのは興味深い。
徳島県連句協会からは「ロータス」No.22が届いた。ここにはさまざまな連句形式が掲載されていて、半歌仙、二十韻のほか花音、非懐紙、山茶花、賜餐、オン座六句、ソネット、獅子など新形式を実作する際に参考になる。
最後に、「第27回大分県民文化祭連句大会実作作品集」について。昨年11月に大分県の中津市(中津文化会館)で開催された連句大会の記録である。中津は福沢諭吉のよかりの地で、中津城もあり、鱧料理でも有名。連句会の前の講演「中津の食と文学散歩」は興味深いものだった。
冬の城朝の光を浴びて建つ
再訪するは紅葉散るころ
料亭の来歴長く記されて
座の文芸としての連句は、各地で開催されているのだ。
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