2020年8月1日土曜日

リモート連句体験記

「大阪連句懇話会」は2012年2月にスタート。関西を中心とする連句グループである。大阪・上本町の「たかつガーデン」を会場とし、今年4月に第30回を開催する予定だったが、コロナ禍で中止となった。6月になって少し状況が落ち着いたので7月に再開する予定だったのが、第二波が来たので集まれる者だけ座の連句、自宅で自粛したい者はリモート連句の二本立てで計画していた。さらに状況が悪化し、座の連句はあきらめて、在宅のままリモート連句をやろうということになった。 テレワークやリモートワーク、オンライン飲み会などが言われるなかで、インターネットにそれほど強くない私などにはハードルが高い。以前からパソコンにZOOMを入れるよう勧められていたが、いよいよお尻に火がついた。
ZOOMのホームページは何度か見ていたが、文字の説明だけでは分かりにくいところもある。手っ取り早くユーチューブを検索して、その説明を参照しながらダウンロードをすると思ったより簡単にできた。
当日は、「日本連句協会」の「リモート連句推進メンバー」の門野優に主催者になってもらった。事前にURLがメールで届くので、クリックすれば自然にZOOMの画面に入ることができる。ZOOMの入っている末端(パソコン・スマホ)とメールが届く末端が別の場合は、ミーティングIDとパスコードを入力すればよい。 私自身の課題としては、ZOOMでパワーポイントを使った説明ができるようになること。これは2月のときに予告していた「俳諧博物誌」のうち、野鳥俳句の話をするのに、パワポなら鳥の写真もスライドに上げることができるので、急遽作ってみた。
山谷春潮(やまや・しゅんちょう)の『野鳥歳時記』は野鳥俳句の名著といわれている。彼は「日本野鳥の会」の創設者・中西悟堂に師事、俳句では水原秋桜子の門下。そんな関係で秋桜子も中西悟堂と交流があり、「馬酔木探鳥会」というのを行っていた。秋桜子も鳥には詳しい。野鳥についてはこの時評(4月10日)でも少し触れたことがある。
「鴨」は冬の季語だが、マガモ・コガモなど渡り鳥(冬鳥)の場合で、「夏鴨」はカルガモのことだという話をした。夏鴨は別名「軽鳬」(かる)とも言い、大和の「軽ケ池」にちなむそうである。歳時記(十七季)では「軽鳬の子」(かるのこ、三夏)というかたちで出ているが、カルガモの親子の姿をとらえた季語だろう。私もカルガモの親子(カルガモのお引越し)を近所の槙尾川で二度見たことがある。あと、漢字で書くと紛らわしいものに「鳬」(けり、三夏)がいて、これば別の鳥。
パワーポイントも無事に使うことができて、私の話は30分で切り上げ、連句の実作会に。捌きは門野さんにお願いした。 句案はチャットを利用する。チャットをクリックすると右側にチャットの画面が出てくる。付句を書き込み、Enterを押すと自分の付句が表示される。参加者全員に表示されるが、捌き手だけに届くようにすることもできるので、投票で発句を選ぶときなどに便利だ。 画面共有はワードやテクストなども使えるので、捌き手が付句の進行を全員にわかるように画面表示してゆく。このときに捌きと書記(執筆)の役割分担が必要だが、今回ははじめての人が多く、捌き一人に負担をかけてしまった。次回からは役割分担ができると思う。
午後1時スタートで(連句実作は1時半から)、午後4時半終了の予定だったが、半歌仙を巻きあげると午後6時近くになった。慣れれば時間短縮できるはずだ。 あと、参加者が多いときは、ZOOMのなかでいくつかの部屋に分けることができるので、そのやり方をリハーサル。自分の部屋の練衆とは会話できるが、別の部屋の画面は映らない。困ったときはヘルプを押せば、主催者が移動してきてくれる仕組みである。 連句会が終了して何人かの方は退出。残った有志でオンライン飲み会を30分ほど。これ、一度やってみたかったんですね。夕食の支度もあるのに引き留めてごめんなさい。

さて、「猫蓑通信」112号に掲載された「リモート連句の可能性」で、山中たけをがリモート連句の利点を五つ挙げている。
①インターネットとビデオ通話のできる端末があれば、どこでも連句ができる。
②自宅から出られない連句人が実作に戻るきっかけになる。
③離れた地方や海外の人とも連句ができる。
④文音に比べれば実際の座に近く、即興性、座の反応なども見られる。
⑤コロナ禍のいま、STAY HOMEでも小さな旅のような体験ができ、心を自由にするきっかけになる。

よいことばかりのようだが、山中は課題も5点挙げている。
①一般参加にはインターネットとビデオ通話のできる端末が必要。
②捌きのほかに書記(執筆)が必要。 ③捌きや書記にはアプリの知識が必要。
④顔を突き合わせての実作に比べれば情報量は少ない。
⑤捌きの進行する会話以外に雑談するにはコツが必要。

①はパソコン、スマホどちらでも可能だが、カメラとマイクが内臓されていないデスクトップのパソコンの場合は外付けが必要になる。ノートパソコンはおおむね内臓されているのでそのまま使える。ZOOMは無料と有料があるが、主催者以外の一般参加者は無料で十分。主催者が有料に入っていれば、一般参加者は40分を過ぎてもそのまま続けることができる。
②は捌きが一人で行うこともできるが、負担が大きくなるので、捌きと書記の役割分担が望まれる。
③はチャットや画面共有のやり方をはじめ、質問やトラブルが生じたときにZOOMに習熟している人がいれば安心できる。
④は実際の座と比べると伝わる内容量は落ちるが、従来の手紙・メール・ツイッターなどに比べると顔の映像と音声があるだけに情報量は多くなる。
⑤は参加者が一斉に喋ると混乱するので、発言のタイミングがむずかしく、話したいことがあっても発言を控えてしまうケースが生じる。捌き手が適宜参加者に質問したり発言を要請したりするほか、参加者が話したいときは最初に「××さん~」と呼びかけてから話しかける配慮も必要。 いずれも一、二度体験すればクリアーできると思われる。

コロナが怖くて外出できない高齢者にとってリモート連句は100%安全である。
また人数制限のある大会・連句会の場合でも、実際の座のほかにリモート連句を併用すれば遠方の人も参加可能。たとえばリモートに20人の参加者があれば5人ずつ4座に分けることができる。50人なら10座。それぞれに捌き手と書記が必要。
前掲の「猫蓑通信」で山中は「転んでもただでは起きずに、コロナ禍のピンチをチャンスに変えて」と呼びかけている。外出を自粛しているが連句からは離れたくないと思っていらっしゃる方はチャレンジしてみてください。

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