2013年4月19日金曜日

「文学フリマ」と「川柳カード」合評会

4月14日(日)に堺市で「第16回文学フリマin大阪」が開催された。
当日、会場で配布されたパンフレットの巻頭言には次のように書かれている。
「ついに大阪でも文学フリマを開催することができました。
2006年の『文学フリマinなごや』から数えて実に7年ぶりの地方開催であり、関西圏では初めての文学フリマです。また、今回はスピンアウト扱いではなく、ナンバリングタイトルとしての開催であり、これも東京以外ではじめてということになります。
文学フリマの立ち上げ当初から、地方へその種をまき、活動を広げていくことは構想されていました。長い時期をかけ、また一歩、前へ進むことができます」
「だからこそ、あらためて書きますが、東京の文学フリマ事務局主催による大阪開催はこの一回限りです。第二回は地元有志の手によって開催されるものと信じています。
今回の大阪開催はゴールではなく、はじまりです」
この「ゴールではなく、はじまり」という感覚は私にはとてもよく分かる。先月、「連句協会全国大会in大阪」の開催を終えたばかりだからである。
さて、文学フリマとは何か。
大塚英志が「群像」2002号6月号に発表した「不良債権としての『文学』」の中で行なった呼びかけを発端として生まれた同人誌即売会である。「自分が『文学』だと信じるもの」を売るイベントで、古書は含まれない。
当日は会場に310のブースが並び、開場前にはすでに百人ほどの若者たちが並んでいた。大学生や20代の人が中心のようだった。事後の発表では総来場者数は約1600人。
短詩型では短歌が中心で、川柳は一点もなかった。
「京大短歌」と「率」をゲットする。
会場には15分しかいなかったので、全体的な印象にすぎないが、どの同人誌がどこに出ているかもすぐには分からない盛況ぶりで、ネット全盛の現在で紙媒体の「文学と信じる」同人誌を売ろうとする人がいて、またそれを求める人がこんなにも大勢いるということは感動的であった。
次の機会にはぜひ川柳も出店してほしい。

「文学フリマ」会場を出て、すぐに大阪・上本町に向かう。
1時から「川柳カード」第2号の合評句会を開催。
同人作品を中心とした合評を約2時間、句会(雑詠1句、兼題「管」1句、互選)を約1時間半。ここでは、「川柳カード」第2号の同人の句を各1句ずつ、( 1行コメント)を付けて紹介する。

変なところに葱や葡萄をそよがせて    石田柊馬
(石部明追悼十句のひとつ。「軍艦の変なところが濡れている(石部明)」)

あやとりは終わり余った手が二本     草地豊子
 (あやとりは一人でもできるが、二人でする場合は手が四本。二本は石部明の手とも。)

雪の日の君を包んでいるりんご      畑美樹
 ( 短歌的抒情。雪に林檎とくれば北原白秋か。)

天は天だけど天にはない安堵       前田一石
 ( 一石さん、新機軸を出していると好評。)

咽喉の奥に覗いているトマスの指     湊圭史
 ( どちらのトマスさんでしょうか。)

音姫に助けてもらうものおとす      一戸涼子
 ( 乙姫ではなく、音姫はトイレで使う流水音アプリなんだって…)

おばあさんやらひいおばあさんやら来て唄う  松永千秋
 (おばあさんたちはどこから来たのか。唄っているのは保育園? )

疼痛に込み合う梵字精錬所        きゅういち
 (「やりすぎ」という意見と「ここまでするなら、もっとやらないと」という意見と。)

ウクレレおじさん高野豆腐に不時着す   榊陽子
 ( キャラクターがおもしろいね。)

死んだふりしても鷗は漫才師       くんじろう
 (「鳥」シリーズの一句。鷗は漫才師。さすらいの醜鳥。)

だから鎖骨を一本くらいください     清水かおり
 ( はい、あげましょう。)

和風しそ味ドレッシングみの虫      井上一筒
 (「食べ物」シリーズの一句。みの虫は食べられません。)

仏壇を開けると止まる靴の音       浪越靖政
( 死者の靴の音だろうか。)

真夜中のたましいきゅるきゅると巻き戻し   山田ゆみ葉
 ( 巻いたじゅうたんを広げてみると、卵をころがすのにちょうどよい。)

おごそかに両便が去りたまふなり        野沢省悟
 ( 大便・小便を排泄してヒトは生きていくという作者の人間観。)

暁斎も割り込む人もいて夕辺          筒井祥文
( 江戸の奇想派の画家・河鍋暁斎。行列の中にこんな人も混じっている。)

冬鳥がいるいる痛くなるほどに         広瀬ちえみ
  ( イタタタタ…冬鳥のせいにする。)

土地鑑は丸い豆腐のあるあたり         小池正博
 ( 土地勘ではなくて土地鑑。高村薫の読みすぎか。)

霜焼けの指を納める桐の函           平賀胤壽
  ( 作品の完成度が高い。)

凌雲閣潰えたのちの九秒台           飯島章友
 ( 十秒の壁と言わなくなった。)

万物の光たばねて不戦勝            兵頭全郎
(「幾つかの銀河をつくる不戦敗」と対応。ゲームかな、スペース・オペラかな。)

罰としてクリオネ三年ヘビ五年         丸山進
  ( セミの馬鹿めが十八年。)

布団から人が出てきて集まった         樋口由紀子
  ( そう言われれば、人の世はこの通りだなあ。)

当日、本多洋子さんから『川柳サロン・洋子の部屋 Part2』をいただいた。Part1以後の3年間のゲスト作品などを集めたもの。

私も百鬼夜行の列にいる      本多洋子
オイスターソースで私を変える

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